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守矢神社の最後の神事:後

いろいろ細部の設定の拙さに気がついて直していたら、自分がお話をコントロールできなくなってしまいました。
とにかく、雰囲気だけでも伝われば幸いです。

本文は追記にございます。




   ◇


 夕日が朝日となって部屋を反対側から照らす頃、伏していた二つの影のうちの一つが起き上がった。
 ようやく神力を取り戻した神奈子は、寝起きと似た感覚で部屋を一望し、自分が倒れる直前の記憶を呼び起こす。

「……諏訪子」

 『最後の神事』を行なう時諏訪子は衰弱しきっているので、神奈子はいつも諏訪子に力を分け与えている。神力が底をついて倒れるくらいに持っていかれるので、神奈子はその『神事』に立ち会えないのだ。
 だから目が覚めた時には、もういない。

「ほら、起きな。もう朝だ」

「う、うぅん……」

 眠っていたもう一人、いやもう一柱を起こす。眠りが深かったようで、意識が覚醒するのに随分と時間がかかった。
 寝ぼけまなこを擦り、ようやく焦点が定まる。

「おはようございます。私、どうしてこんなところで……神奈子様?」

「……どうしたんだい、諏訪子。今更私に様付けかい? 止してくれ」

「神奈子様? どうしたんです、寝ぼけているんですか? 私は――」

「諏訪子だ。お前は、洩谷諏訪子だ」

 わけがわからない。神となった目の前の少女の心中を一言で表すならば、これが的確だろう。
 神奈子は哀れむような悲しむような、しかし芯のある視線で少女を見つめる。

「『最後の神事』を終えたんだろう? ならばもう、お前は東風谷早苗ではない。洩谷諏訪子だ」

 息を呑む音が響く。こんな『諏訪子』の表情を見たのは何度目だろうか。
 現状を理解しようと『諏訪子』は記憶の糸を辿る。
 そうだ、昨日の夕方、『最後の神事』を――。

「!」

 記憶の中には自分に身体を差し出す早苗がいた。自分を看病する早苗がいた。
 そして身に覚えの無い記憶があった。愛した男と交わり、神奈子の圧倒的な力に敗北して力を失うという、話しか聴いていない神事のルーツの光景も。
 自分の記憶は、無い。
 まるで自分がそれを経験したように。自分の記憶が、諏訪子のそれに書き換えられたように。

「『最後の神事』は、諏訪子様の記憶の継承?」

 腕で眼を覆い、涙を隠す。

 『最後の神事』により、早苗の身に諏訪子が降りた。
 だがそれは『早苗の身体を諏訪子が奪う』のではなく『早苗が諏訪子の名前と記憶を引き継いで神となる』ものだったのだ。
 つまり、本当にいなくなったのは。

「諏訪子様、どうして嘘を……いえ、そうですね」

 もし諏訪子が本当のことを教えてしまえば、早苗は神事を受け入れなかっただろう。
 だからあえて嘘を教え、早苗が神事を受け入れ易いようにしたのだ。

「神奈子様は、知っていたのですか? このことを」

「様はいらないよ、諏訪子」

 言い残して部屋を去る神奈子は、早苗の問いを肯定しているようだ。
 慌てて追いかけようとして、自分の傍で何かが寝息を立てているのに気づく。

「諏訪子様!?」

 座り込み、寝息の正体を確認する。それは、子供だった。人間でいうと三歳ほどの女の子。
 その寝顔は、どこか諏訪子の面影があって。

「……!!」

 『私の娘が……現人神が、身体を差し出した』。
 その言葉と、諏訪子の面影を残す女の子。

 神事を終えた神は力を失い、ただの人間の子供となる。
 子供は現人神として成長し、子を儲け、またいつの日か神が力を失う時、『最後の神事』が行なわれる。
 この仮説を思いついた。それが真実であるならば、諏訪子は早苗の――。


 それでも涙は止まらなかった。

 

 こうして早苗は、諏訪子になった。
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