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亀の歩 第十七回 『日本一』

 リックの打球が雨上がりの水分を含んだ空気を切り裂く。抜ければ試合の行方を大きく変えるであろうそれは、妹紅のグラブにすっぽりと収まった。瞬間、選手が一斉にマウンドに集まる。中心に立つアリスを労う為に。優勝の喜びを噛み締める為に。
 全員が満面の笑みを浮かべている。監督はもちろん、魔理沙が、妹紅が、レミリアでさえも、優勝と言う名の美酒に酔い痴れる。
 この一年、タートルズの動向をずっと追っていた私には、彼女達が一つの劇を成功させたように思えた。

■選手を信じる采配

 日本一の功労者は誰か、と選手達に問えば、全員がアリスだと答えるだろう。中継ぎ投手も兼ねながら二癖も三癖もあるタートルズの選手を一つにまとめ上げ、チームとして成立させたアリスの手腕には、目を見張るものがある。
 幻想郷の住民、特に妖怪は我が強い。自己中心で力強く、他者に従うことを良しとしない。そんな者達をただの人形遣いが、まるで己の人形を操るかのように采配を執り、勝ち星を重ねた。チーム内での確執も無く、全員が和やかムードで野球に集中していた。
「初めて試合で投げた時ね。とっても緊張したの。もし打たれたらどうしようって思うと、すごく怖かった。でも、アリスが優しく励ましてくれた。だから落ち着いて投げれたんだ!」
 シーズン半ばから一軍に合流し、四勝をあげたメディスンは、精神が丈夫な選手ではない。幼げな雰囲気を醸し出し、少し強く当たればすぐにでも折れてしまいそうだった。メディスンに必要なのは、優しく接してくれる存在。アリスはその役を見事にこなしてみせた。全ての選手が楽しく野球に集中できるように、ただそれだけを考えて。
 チームの雰囲気、勢い、結果。全てがアリスがいなければ成し遂げられなかっただろう。

■七色変化球

 選手としてのアリスは、中継ぎとしてチームの危機を幾度と無く救った。特筆すべきは、『七色変化球』と比喩される多彩な持ち球。汎用性の高いスライダー、キレ味鋭いシンカー、微妙に落ちるサークルチェンジ、不規則に動くシェイクを自在に操り、打者に的を絞らせない。
 だが、球速は他の投手と比べて遅く、最高球速は135kmにも満たない。それ故にストライクゾーンの隅を突く精密な投球で打者を打ち取ってきた。たった一つのミスも許されない、気力と神経を必要以上に使う投球。それを可能にしていた集中力が、ついに途切れた。
 日本シリーズ第五戦、一点リードの八回表、マウンドにはアリスが登った。一死後、三番の礒部に投じた二球目のスライダーは殆ど曲がらなかった。失投。その一言がアリスの脳内をかすめる時には、打球はライトスタンドに放り込まれていた。
「あの一球は完全に私のミス。今まで抑えてくれたメディや点をとってくれた皆を、あれだけで裏切ってしまった。本当に、皆には申し訳ないって思った。でも、これが選手を信用していないって事だった。勝ち星だけを気にして、チームの勝利を後回しにして・・・散々皆で勝つって言っていたのに、私は成績だけを気にしていた。そんな考えだから、あそこでホームランも打たれたのかもね」
 傷心のアリス。チームが勝ったからよかったものの、肝心の監督がこんなにも落ち込んでいては、次の試合に何かしら影響が生じるかもしれない。が、第六戦には何事もなかったように指揮を執るアリスの姿があった。自身も九回のマウンドに立つ。先頭打者は本塁打を浴びた礒部。
「同じ過ちは繰り返したくなかった。だから先頭打者は完璧に抑えたかった。そうしないと、自分の中で悔いが残ってしまう気がして・・・」
 初球は内角のスライダー。前回は曲がらなかったボール。が、今回は見事に決まった。内角を意識させられた礒部は続く外のシュートを見送り、真ん中低めの直球を引っ掛けてセンターフライ。たった三球で、因縁の相手を打ち取った。
 その後もヒットを二本打たれたものの、後続を断つ。アリスはマウンドという特等席で優勝を迎えた。

 少女達が全力を尽くして勝ち取った日本一の称号。この栄光を幻想郷の住民は絶対に忘れないであろう――。

(尚、選手顔写真は兎虎が盛大に散った為無掲載です。ご了承下さい)

あとがき
祝、幻想郷タートルズ日本一。監督兼中継ぎ投手のアリスの心身労は凄まじい。メンバーがメンバーだし。
地味に礒部が因縁の相手扱い。日本シリーズじゃ礒部は凄いのか乙なのかよくわからん。
この回は明らかに2000字に達していないのに2000字オーバーだとか言われた。何がいけなかったんだ・・・?
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