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蛙亀の歩 第九回 フロッグスサイド 『恵みの稲妻』

 野球は、最後までわからない――。この試合は、まさにそれを表した試合だった。
 天子と永琳の両先発で幕を開けた試合は、初回から点を取り合う荒れた展開。先にマウンドを降りたのは練習試合で好投した天子だった。五回までに4本の本塁打を含む被安打11本6失点でKO。反対にタートルズ先発永琳は13本もの安打を浴びるも要所を締めて3失点に抑える。
 その後両チーム一点ずつを取り合い、タートルズリードで迎えた最終回。マウンドには亀の守護神、霊夢が登った。一死後からフロッグスは三連打で一点を返し、打席には六番、衣玖。内角のシュートを振りぬいた打球は高い弾道を維持してライトスタンドに飛び込んだ。起死回生の逆転スリーランホームランで、フロッグスは崖っぷちから息を吹き返した。

■蛙の仕事人

 足が遅すぎるのが珠に傷だが、その弱点を補う勝負強さを持つ衣玖。亀の妹紅と比較して『蛙の仕事人』と呼ばれるほど、ファンにも好印象を与えている。
 ただ、衣玖自身には仕事人の自覚はないらしい。逆転のスリーランについて、彼女はこう語った。
「私で決めようとは思っていませんでした。ただ後ろの神奈子さんに繋ぐ為に、最低でも走者だけは進めようと右方向を意識して打席に立ちました。ホームランはたまたま真芯にボールが当たっただけです。そんなに褒められることではないですよ」
 あくまで謙虚に受け答えする衣玖。一見すると闘争心が無いようにも思われる言動だが、勿論そんなことはない。彼女はある一つの信念を曲げないようにしている。
「野球だけに限らないことですが、失敗しないことなんて無いのです。大事なのは、失敗から何を学ぶか。私の場合、五回に回ってきた第三打席ですね。二死とはいえ一、二塁のチャンスで、しかも一塁ランナーは死球で出塁した総領娘様(天子)でした。立場上、総領娘様の無念を晴らすためにも打たなければならなかったのですが、結果はショートゴロ。ですから私は、もうチャンスで凡退する失敗は犯したくなかったのです」
 天子が受けた死球は故意だと思われる。先に相手を挑発したのは天子ではあるが、主が痛い思いをしているのに従者が黙っている訳にはいかない。だというのに結果は凡退。これが衣玖の『失敗』だった。
 だから衣玖は同じミスを繰り返さないように、同じ場面が巡ってきたら最低でも走者を進めようと心がけた。その結果が犠牲フライと逆転スリーランだ。信念を曲げない行為は、全てに勝る意思の力だ。

■蛙の苦労人

 衣玖は仕事人としての顔のほかにもう一つ、苦労人としての顔もある。なぜなら、衣玖はこの試合に先発した天子のお目付け役でもある。天子は素行に問題があり、衣玖は頭を抱えているという。
「総領娘様は世の中を知らなさすぎるのです。今日だって自分のお力を過信しすぎて対戦相手の方々を見くびっておられました。タートルズが日本シリーズを征したチームだと知っていらっしゃる筈ですのに・・・」
 衣玖は天子が崩れるのではないかと恐れていた。確かに天子の投げるストレートは素晴らしいのだが、気持ちが伴っていなければただの棒球だ。その上、天子はこの幻想郷リーグから参加した投手。強打者に真っ向から向かっていく度胸はあっても、打ち込まれたときの気持ちの落ち着け方を知らない。4本も本塁打を打たれたのは、マウンド上で一人相撲をしてしまったからだ。天子にはいい薬になっただろう。
「試合が始まる前、正直に言いますと、私は総領娘様に少し痛い目にあってほしいと思っていました。自信があるのはよいのですが、天狗になりすぎては良いことなど一つもありません。本日の試合は総領娘様にはいい教訓になったと思います」
 どれほど自分に自信があっても、相手を侮ってはいけない。打ち込まれたことにより、自己中心的な天人は考えを改めるきっかけを得た。
 これで勝率が三チーム並んだ。最終戦の相手は全セ。フロッグスは決勝トーナメント進出をかけて、全セとの雌雄を決する戦いに挑む。
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