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蛙亀の歩 第十二回 タートルズサイド 『変則オーダー』

 タートルズのスターディングオーダーを観て驚かなかったファンはいないだろう。私もそうだ。
 レミリアとフランドールの打順を一つ繰り上げ、四番には右投手にめっぽう強い小町を、そして五番には投手の映姫を起用するというなんとも大胆なオーダーだった。
 それにしても、何故このようなスタメンに決めたのだろうか? 実はこの試合、投手コーチの霊夢が風邪が治りきっていないらしく欠場した。その為監督のアリスがブルペンを、采配は魔理沙でも輝夜でもなく、幽々子が担当したという。
 その為、このようなオーダーが生まれた。一見滅茶苦茶に見えるが、よく考えるととても理に適っている。

■二番レミリア、九番美鈴

 今回のオーダーの特徴の一つが、二番にレミリアを起用した点。普通二番打者には小技を駆使して走者を進めるイメージがあるだろう。だがレミリアがバントや進塁打を打つなど想像できないし、そもそもありえないだろう。
 レミリアを二番に、そしてフランを三番に繰り上げた理由は、二人により多くの打順を与える為。前を打つ打者が少ない分一度に大量点は望めなくなるが、たった一人で一点を奪える紅魔姉妹が上位にいるのは相手にとって脅威となる。
 この打順に注目すべきもう一つの点は、九番に美鈴を置いた事。どちらかといえばチャンスメーカータイプの彼女を九番に置けば、トップにかえってからの打線の繋がりも大いに期待できる。
 それだけではない。美鈴の次には咲夜、吸血鬼姉妹が並ぶ。これはタートルズ打線の象徴、通称『紅打順』の完全形態だ。
 故に、咲夜の負傷退場は残念だ。紅打順は恐ろしさを発揮する前に解体せざるを得なかったのだから。

■深まる八番妖夢の謎

 なぜ幽々子はこのような打順に決めたのだろうか。
「仲の良さそうな人たちを並べて繋がりを重視しただけよ~。あ、あとちょっと面白いように並び替えたりもしたわ。二番レミリア、五番に閻魔様(映姫)とか、誰も見たことも考えたこともないような打順をね~」
 と語る幽々子だが、もう一戦も落とせない状況でそのようなことを試している暇があるのだろうか。この言葉だけでは、ただ自分が面白そうだからやってみた、という自分勝手な印象を抱かざるを得ない。
 もしかしたら、幽々子の狙いは別の位置にあったのかもしれない。私が怪しいと睨んでいるのは八番に入った妖夢だ。スタメンの中で彼女だけ近くに『仲の良い人』が存在せず、しかも九回にはペナントで一塁守備に幽々子がついている場合のみしか守らなかった二塁を守った。
 代打で途中出場した燐を中堅で使いたいのであれば妖夢を下げてにとりを一塁に起用する手があったのに、そうしなかった。やはり幽々子は、妖夢に何かを掴んでほしかったのではないだろうか。
 だが、その点について幽々子に問うてみた所、「そういえばお腹が空いたわね~」とのコメントを頂いた。やはり何か裏に隠しているものがあるらしいが、どうやら私達に話すつもりはないらしい。
 この一戦で、幽々子が問題視していた『何か』が解決している事を願いたい。

蛙亀の歩 第十一回 『しろくろまくバッテリー』

 フロッグスに続いてタートルズも決勝リーグ進出を決めた。しかもエラー絡みとはいえ全パに六点差で勝ち、難しいと思われていた一位通過も達成。
 これがタートルズの底力だ。ペナント、日本シリーズを制した実績、そして不可能と思われる状況でも諦めることなくプレーに打ち込む姿勢。それを全選手が意識しているのだ。ただの幻影では絶対に敵わない。
 その中でも、特に自分のやるべきことを意識し、勝利のためチームプレイに徹した二人は、そのまま一位通過の立役者になった。それは好守に大活躍だった冬妖怪と、常にタートルズを支えた左のエースの二人だ。

■満塁女、レティ

 打のヒロインはレティだ。グランドスラムでチームのリーグ一位通過に大きく貢献し、リード面でもスタミナと制球に難のある魔理沙を少ない球数で完封に導いた。
「いつもど~りに打席に立っただけよ~。ホームランなんて全然考えて無かったわ~。好投してくれてる魔理沙の為に打っただけよ~」
 『魔理沙の為』というキーワードを強調したレティ。彼女はキャッチャーとしての責任感が誰よりも強い。投手陣が打ち込まれたり好機で打てなかった時には気分的にもかなり沈んでしまうのだとか。
 その責任感からか、レティは満塁にめっぽう強い。ペナント開幕戦では走者を一掃するツーベースを、フロッグスとの直接対決ではタイムリーを打っている。満塁は一打で大量点を得たりも出来る反面、併殺の危険も大きい。だからこそ、打ちたい、打ってあげたいという気持ちか強くなるのだ。
「私はどちらかといえば打つほうを期待されてたんだと思うけれど~、シーズンでは二割も打てなかったわ~。けれど今は冬、つまり私の季節。シーズンとは違う私を見せ付けて、本当の冬の恐ろしさを思い知らせてやりたいわ~」
 開幕前は打のレティ、守りの輝夜と言われた。しかし実際は攻撃面でも守備面でも輝夜に劣り、さらに八月は暑さに負けて登録抹消されるなど、正捕手となる事ができなかった。
 しかしそれは春から秋にかけての話。本来なら冬妖怪のレティは眠っている時期だが、彼女は無理をして試合に出続けた。その為身体への負担も大きく、自らの力を発揮しきれなかった。だが今は冬。本来の力を取り戻したレティはまだまだ止まらない。

■完封女、魔理沙

 投のヒロインは全パを完封で抑えた魔理沙だ。唸りを上げる直球とツーシーム、そして変化の大きいカーブを巧みに使って全パに的を絞らせず、走者を出してもきっちり併殺で傷口を広げさせない。
 唯一のピンチは五回だ。三安打で一死満塁とされ、迎える打者は一番の森本。しかし魔理沙は動揺する素振りも見せず、ストレートで詰まらせきっちりホームゲッツーでピンチを脱した。
「私としては三振で終わらせたかったんだがな。だってほら、満塁のピンチを連続三振で切り抜けるのって格好いいだろ? だけど、無理して三振狙って打たれたら元も子もないしな。今日は勝利に徹したんだ」
 シーズンではどんな場面でも三振を狙って投げていた魔理沙。だがタートルズで戦っている中で、彼女は全ての場面で三振を狙わなくなった。三振第一の投球は変わっていないが、以前よりもカーブを使って緩急を生かすようになった。その結果が、ほぼ毎回走者を出しながらも五回以外は二塁を踏ませず、かつわずか85球での完封劇だ。
「完封は初めから狙っていたぜ。私の力で決勝への道を開きたかったってのもあるけど、最近中継ぎが投げすぎで疲れが溜まってるだろうし、霊夢もいなかったんだ。だから私がサクッと完封して、あいつら(中継ぎ陣)の力を温存しておきたかったんだ」
 一見自分勝手なように見えて、実はチームをよく見ている魔理沙。これも、監督のアリスを影から常に支えてきたことの副産物だろう。監督を見ていると、いやでも勝つために必要なことを目の当たりにするのだから。
 決勝は誰もが望んだタートルズとフロッグスの頂上決戦。両者共に負けられない戦いだ。手に汗握る試合展開を期待したい。

蛙亀の歩 第十回 『全員野球』

 谷繁の打球がショートに転がる。この日三安打一打点と波に乗っている雛が難なく捌いて一塁に送球。一塁手、ついにリーグ第一号の本塁打を打った勇儀のグラブが音を立てる。その瞬間、フロッグスの決勝トーナメント進出が確定した。
 良くも悪くも、フロッグスの野球だった。相変わらず三月精は僅差の試合は任せられそうにない投球を披露し、野手では射命丸の調子がいま一つ。だが勇儀には待望の一発が飛び出し、不安だった中継ぎ陣も静葉の配置転換で厚みが増した。
 どのチームよりも一番早くトーナメント進出を決めたフロッグスだが、好調の秘訣はどこにあるのか。

■恐怖の下位打線

 フロッグスの恐ろしい点は下位打線にある。その象徴とも言える存在が鍵山雛だ。タートルズから移籍してきた選手だが、藍や幽香と違い実績は無きに等しかった。というも、ショートはあの咲夜がレギュラーに君臨しており、穴だったセカンドも美鈴の努力に敗れ、シーズン終盤は二軍暮らしが続いていたからだ。そんな彼女が、フロッグスに移籍して正遊撃手の座を掴むと、シーズンの二軍暮らしが嘘のように打ちまくっている。
「私はタートルズで二度負けた。一度は遊撃手争いをメイドさん(咲夜)に、二度目は二塁手争いを門番さん(美鈴)に。メイドさんはまだいいわ。元々高すぎる能力を持っていたのだし、私自身敵わないと思ってた。けれど二塁手は違う。実力は殆ど同じだったけど、私は努力が足りなかった。気づいた時には、セカンドは門番さんが守っていたわ。もう私は、誰にも負けたくない。二度も負けた身だから、もう恐れる必要なんて無い。ただがむしゃらにやるだけよ」
 元々、実力はあった。しかしその前には咲夜という高すぎる壁と美鈴というライバルがいた。結局競争には負けてしまったが、二つの敗北は屈辱以上に大きなものを雛に与えた。
 雛の好調の秘訣は先述の開き直りもそうだが、もう一つ要因がある。それは打順だ。ほぼ毎試合マルチヒットを記録しているのに、彼女の打順はほぼ八番か九番に固定されている。出塁率の高い雛を上位に据えればそれだけ得点の機会も増えるのだが、彼女はそれを受け入れない。それは何故か。
「以前、調子がいいからと二番を任された。けれど、結果はノーヒットだったわ。あの時は自分が上位だという事を意識しすぎて何をしたらいいのかわからなくなってしまった。やっぱり、細かいことを考えないで打てる八番のほうが、私の性にあってるわね」
 タートルズとの決戦の際、好調を理由に打順が二番に上がった。しかし普段とは違うことを意識しすぎて5タコに1併殺と、勝利に貢献できなかった。二番はケースバッティングを重視される打順で、一打席一打席に全力で挑んでいる雛には荷が重すぎた。だから雛は下位を打っているのだ。

■頼れる控え捕手

 もう一つの要因は控えの選手だ。今日のスタメンマスクは、不調の神奈子に代わってキスメが初めて被った。彼女は今リーグから参加した選手だ。誰もが今日のスタメンの穴だと思っただろう。何しろキスメは妖怪としても大きな力を持っていない。神である神奈子と比較すれば、実力の差は否めない。
 しかしいざ蓋を開けてみれば四打数四安打二打点の大暴れ。リード面でも強打の全セを五安打に抑えるなど、一発を打たれやすいさとりや不安のある中継ぎ陣を巧みに導いた。
「私から見ても、キスメは良すぎる働きをしていたよ。さとりのボールは当たれば飛ぶ。そんな彼女を強打者の多い全セ相手にリードする事はかなり骨が折れたよ。ずっと前から野球を知っている私でさえこうなんだから、キスメはもっと怖かっただろうね。でも(キスメは)ちゃんと自分の仕事をしてくれた。こりゃ、私もうかうかしてられないね」
 全セの打線は三番から八番までが四番打者の経験がある選手だ。どこからでもホームランが打てそうな打線に球の軽いさとりで立ち向かっていくのだ。配球を一度でも間違えると、ボールはスタンドで弾むことになるだろう。
 だがキスメは、恐れを押し込めた強気のリードで全セに挑んだ。二回に小笠原に内角の球をホームランにされたが、それでもキスメは一度打たれたことを承知で内角の球を要求し続ける。あえて打者の得意なコースに投げるのはいつ一発を打たれてもおかしくないが、打者を力ませて打ち損じを狙うこともできる、諸刃の剣の策。
 この諸刃の剣が傷つけたのは全セだった。小笠原の第二打席、初球は内角高めの直球だった。それは本塁打を打たれた時と全く同じ球内角だった。しかし小笠原は力んだのかセカンドフライに倒れる。怖さを押し殺して強気に攻めるキスメのリードが勝ったのだ。
 このように、たとえ主軸の選手が出場しなくとも控えの選手が十分に穴を埋める働きをする。これこそ、全員野球の典型といえるだろう。

蛙亀の歩 第九回 フロッグスサイド 『恵みの稲妻』

 野球は、最後までわからない――。この試合は、まさにそれを表した試合だった。
 天子と永琳の両先発で幕を開けた試合は、初回から点を取り合う荒れた展開。先にマウンドを降りたのは練習試合で好投した天子だった。五回までに4本の本塁打を含む被安打11本6失点でKO。反対にタートルズ先発永琳は13本もの安打を浴びるも要所を締めて3失点に抑える。
 その後両チーム一点ずつを取り合い、タートルズリードで迎えた最終回。マウンドには亀の守護神、霊夢が登った。一死後からフロッグスは三連打で一点を返し、打席には六番、衣玖。内角のシュートを振りぬいた打球は高い弾道を維持してライトスタンドに飛び込んだ。起死回生の逆転スリーランホームランで、フロッグスは崖っぷちから息を吹き返した。

■蛙の仕事人

 足が遅すぎるのが珠に傷だが、その弱点を補う勝負強さを持つ衣玖。亀の妹紅と比較して『蛙の仕事人』と呼ばれるほど、ファンにも好印象を与えている。
 ただ、衣玖自身には仕事人の自覚はないらしい。逆転のスリーランについて、彼女はこう語った。
「私で決めようとは思っていませんでした。ただ後ろの神奈子さんに繋ぐ為に、最低でも走者だけは進めようと右方向を意識して打席に立ちました。ホームランはたまたま真芯にボールが当たっただけです。そんなに褒められることではないですよ」
 あくまで謙虚に受け答えする衣玖。一見すると闘争心が無いようにも思われる言動だが、勿論そんなことはない。彼女はある一つの信念を曲げないようにしている。
「野球だけに限らないことですが、失敗しないことなんて無いのです。大事なのは、失敗から何を学ぶか。私の場合、五回に回ってきた第三打席ですね。二死とはいえ一、二塁のチャンスで、しかも一塁ランナーは死球で出塁した総領娘様(天子)でした。立場上、総領娘様の無念を晴らすためにも打たなければならなかったのですが、結果はショートゴロ。ですから私は、もうチャンスで凡退する失敗は犯したくなかったのです」
 天子が受けた死球は故意だと思われる。先に相手を挑発したのは天子ではあるが、主が痛い思いをしているのに従者が黙っている訳にはいかない。だというのに結果は凡退。これが衣玖の『失敗』だった。
 だから衣玖は同じミスを繰り返さないように、同じ場面が巡ってきたら最低でも走者を進めようと心がけた。その結果が犠牲フライと逆転スリーランだ。信念を曲げない行為は、全てに勝る意思の力だ。

■蛙の苦労人

 衣玖は仕事人としての顔のほかにもう一つ、苦労人としての顔もある。なぜなら、衣玖はこの試合に先発した天子のお目付け役でもある。天子は素行に問題があり、衣玖は頭を抱えているという。
「総領娘様は世の中を知らなさすぎるのです。今日だって自分のお力を過信しすぎて対戦相手の方々を見くびっておられました。タートルズが日本シリーズを征したチームだと知っていらっしゃる筈ですのに・・・」
 衣玖は天子が崩れるのではないかと恐れていた。確かに天子の投げるストレートは素晴らしいのだが、気持ちが伴っていなければただの棒球だ。その上、天子はこの幻想郷リーグから参加した投手。強打者に真っ向から向かっていく度胸はあっても、打ち込まれたときの気持ちの落ち着け方を知らない。4本も本塁打を打たれたのは、マウンド上で一人相撲をしてしまったからだ。天子にはいい薬になっただろう。
「試合が始まる前、正直に言いますと、私は総領娘様に少し痛い目にあってほしいと思っていました。自信があるのはよいのですが、天狗になりすぎては良いことなど一つもありません。本日の試合は総領娘様にはいい教訓になったと思います」
 どれほど自分に自信があっても、相手を侮ってはいけない。打ち込まれたことにより、自己中心的な天人は考えを改めるきっかけを得た。
 これで勝率が三チーム並んだ。最終戦の相手は全セ。フロッグスは決勝トーナメント進出をかけて、全セとの雌雄を決する戦いに挑む。

蛙亀の歩 第九回 タートルズサイド 『明暗分かれた同居人』

 一部の選手がフロッグスに移籍し、タートルズは一軍と二軍の区別が無くなった。これによって、ペナントでは滅多に試合に出られなかった選手にも出場する機会が激増した。そういった選手達は、まるでシーズンで活躍できなかった鬱憤を晴らすかのようにプレイしている。
 例えば、正二塁手として期待されていた筈の鈴仙。てゐと雛の移籍によって増えた出場機会を、彼女はしっかりとモノにしている。他にも妖夢や慧音、投手陣では小悪魔やリリーWがしっかりと結果を残している。
 そして忘れてはならないのが萃香だ。ファンの不信を尻目に、精一杯の活躍をしている。

■鬼の一撃

 シーズンを通してならば、母数は少ないものの三割オーバーの打率に1.0を越えるOPSを残した萃香。しかし中継試合に限っては勝負どころで凡退したり、期待された本塁打も0本に終わったりと、ファンに活躍しているイメージを残せなかった。日本シリーズ第五戦では決勝打を打ったが、萃香に対する偏見は拭い去れぬまま。
「ファンの人達には腹は立たないよ。皆が観てる前で打てなかったのは事実だしね。でも、自分に腹が立つ。打席に立つと同時に『チェンジだな』とか『萃香乙』とか、そんな野次を聞くとね、どうして自分はもっと真剣に野球に取り組んでなかったのかって思うときがある。だから、この幻想郷リーグは、私にとって特別なんだ。皆の前で打てなかったペナントのイメージを払拭して鬼の威厳を取り戻す為の、大事な機会なんだ」
 新聞を読み、そこで初めて活躍を知られるようでは花形選手には程遠い。ファンの前、特に中継試合で何度も活躍して初めてその称号は手に入る。タートルズでは妹紅がいい例だ。
 萃香はこれができなかった。ただでさえ守備が不得手で出場機会も限られているのに、ここでいい印象を残せなければ期待なんてされない。罵声に萃香は耐えられなかった。だから出場機会を求めて外野へのコンバートを打診し、嫌いだった練習にも力を入れた。
 結果は出ている。幻想郷リーグの序盤こそ調子は上がらなかったが、最近は犠飛を打ったり四球で出塁する等チームプレイを意識する場面もあれば、ポールや天井を直撃するホームランを打つなど迫力満点の打撃で自分をアピールしている。忘れられた鬼の威厳を取り戻す日は、すぐそこにある。

■巫女の不覚

 逆に、シーズンでは好調だったが幻想郷リーグで調子を落とした選手もいる。中でも、このリーグから抑えに転向したエース、博麗霊夢の不調はチームに大きな影を落としている。
 練習試合は素晴らしい投球で三者凡退に抑えたが、最近の霊夢は走者を出しながら何とか抑える、いわゆる『劇場』を繰り返した。そしてフロッグスとの第二戦で逆転のスリーランホームランを打たれ、遂に救援失敗を記録してしまう。
「調子は悪くなかったわ。むしろ良いくらい。なのに、球に力が乗っていかなかった。レティのリードと私の勘でどこに投げたら打たれるかは大体わかってたのに、全部打たれる所に投げちゃった。それに、球に力が乗らないから制球にすごく力を使うフォークが投げられなくて、投球に幅を利かせられなかったの」
 霊夢は決め球のフォークを一球も投げなかった。彼女のフォークは切れ味も変化も一球品だが、それ相応の制御力も必要になる。霊夢の言うように球に力が乗らない状態では、フォークは投げられない。
 また、レティのリードにも問題があった。時はペナントレースの開幕戦までさかのぼる。当時先発だった霊夢は、五回に突如制球を乱してピンチを迎え、そしてホームランを打たれている。レティは同じ失敗を繰り返してしまった。
「コントロールが定まらない時にシュートを要求しすぎちゃうのは私の悪い癖ね~。霊夢のシュートはカウントを稼ぎ易いんだけど、狙われたらひとたまりもないの。あの時(開幕戦)もシュートを投げさせすぎて痛い目を見てるのに、すっかり忘れてしまっていたわ~」
 フォークが使えなくとも、霊夢にはまだ持ち球があった。にもかかわらずシュートばかり投げていては、狙われるのは必然。これは他の球をちゃんと使っていたら防げた本塁打なのだ。
 同居人の萃香とは逆にピリッとしない霊夢とレティ。チームを幾度と無く救った黄金バッテリーの失敗で決勝トーナメント進出も危うくなったタートルズ。もう負けは許されない。最終戦にはなんとしても勝たなければならない。我々は選手を信じ、精一杯の応援をしたい。

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